【水銀鉱山】丹生鉱山跡を見学。東大寺の大仏建造に使用された水銀の産地。精錬方法(予想)も解説

関西,東海

丹生鉱山

丹鉱山

丹生鉱山は三重県多気郡にあった水銀鉱山です。水銀の産地は国内では丹生のほかに奈良県と北海道が有名です。ただし、水銀の危険性もあり現在ではいずれも閉山されているようです。

丹生鉱山の歴史は非常に古く、縄文時代には辰砂(=しんしゃ:硫化水銀)の採掘が行われており、土器の着色等に使用されていたそうです。奈良時代以降、大仏の建造など寺院用の資材として水銀は貴重な鉱物資源であり、中国産の水銀が輸入され始める室町時代までは活発に採掘されていたようです。

現在は閉山され、坑道内に入ることはできませんが、坑道入口と精錬装置が保存されているため見学が可能です。

東大寺大仏との関連性

奈良時代には丹生鉱山は屈指の水銀鉱山として知られており、東大寺の大仏建造の際に使用された約2トンの水銀の大部分が丹生のものだったとされています。建立後、大仏の修復に使用された水銀に関してはすべて丹生産のものとされています。

看板

アクセス・料金

住所:〒519-2211 三重県多気郡多気町丹生[GoogleMapで開く]

紀勢自動車道、勢和多気ICから10分ほどの距離です。県道421号線から逸れた後は、田んぼ横の細い道を直進すると砂利が敷かれた広い駐車場が見えます。

駐車料金、見学料は無料となっています。駐車可能な台数はかなり多いですが、ほとんど人が来ない場所のため特に気にする必要はないでしょう。

駐車場

順路について

駐車場奥に坑道跡・精錬装置へと続く道があります。入ってすぐに右回り・左回りと看板があり、坑口跡と精錬装置どちらを先に見ますか?という感じですが、どちらに進んでも最初に精錬装置に着きますなんやこれ…

順路案内
実際はこんな感じです

左回りにある橋は半分朽ちていますので不安な方は右回りが無難です。右回りの場合、途中に分岐があり、「←精錬装置」の案内があります。先に坑道跡が見たいと思って右の道を進むとただの山です。私は騙されました!案内が不親切すぎますね。

橋

駐車場や施設そのものは綺麗に整備されているのに対して、順路案内があまりに不親切なのは謎です。

精錬装置

精錬所

前述の通り、右回り・左回りのどちらを選択しても最初に精錬装置に到着します。

カーポートで保護された装置で、非常に特徴的な施設となっています。案内の看板が設置されていますが、読んでもイマイチ分かりにくいです。

精錬装置解説

精錬方法の解説(予想)

看板の開設は「左」や複数回登場する「鉄管」のせいで非常に分かりにくいですが、現地で実物を見た予想を書いておきます。まず解説されている工程は下記のようになっています。

  1. 三本の鉄管に辰砂と石灰を10対1の割合で入れる。
  2. 左の炉に詰めたおがくずに点火し、加熱する。
  3. 300度程度で水銀が気化する。
  4. 垂直の三本の鉄管で冷却、液状の水銀となるので捕集する。
  5. 残ったガスが斜めの鉄管を通り、左端の円筒に入り液化、捕集する。

1.三本の鉄管に辰砂と石灰を10対1の割合で入れる。

1つ目の説明からして、「三本の鉄管」とは…?となります。私の場合、どの鉄管やねん!が第一印象でした。

この鉄管ですが、恐らく目視できないものを指していると思われます。次項に出てくる炉の内部に設置されているのではないでしょうか。精錬施設の裏手に回ると写真のような3つの蓋があります。この蓋を開けると鉄管になっており、そこに辰砂と石灰を入れるのではないかと予想しています。

炉裏側

2.左の炉に詰めたおがくずに点火し、加熱する。

2つ目の解説でも「左」という言葉が余計にややこしくしてきます。看板を見ながらの場合、左ではなく右側に炉があります。

炉の大きさに対し、内部が非常に狭いことから前項の鉄管は炉の内部にあると思われます。

炉
炉内部
炉の内側

3.300度程度で水銀が気化する。

300度程度となっていますが、これは水銀の沸点が356.7度であり、そこから起きた勘違いではないかと考えています。確かに300度付近で気化はしますが、、、

実際には、辰砂(硫化水銀:HgS)から水銀を単離させるためには脱硫が必要であり、化学式ではHgS+O→Hg+SO2という反応を起こす必要があります。この反応は約600度の温度が必要です。600度まで加熱された水銀は空気中では2Hg+O→2HgOとなってしまいますが、蓋付きの鉄管(密閉容器)内では脱硫に酸素を奪われ、単離・気化されるのではないかと思います。

※筆者は理系卒ですが生物分野のため化学は疎く、上記は完全な予想となります。

4.垂直の三本の鉄管で冷却、液状の水銀となるので捕集する。

この「垂直の三本の鉄管」は炉に隣接したものを指していると思います。鉄管の下側は写真のように漏斗状になっており、下側に容器を置いて液体となった水銀を捕集(回収)していたのではないかと思います。

垂直管

5.残ったガスが斜めの鉄管を通り、左端の円筒に入り液化、捕集する。

一度の冷却では気化した水銀を完全に回収できなかったため、冷却用の鉄管を延伸し、効率よく回収していたのではないでしょうか。

捕集についてですが、垂直の鉄管(左端の円筒)下部が漏斗状になっているため、前項と同じようにしていたのではないかと思います。

ガスの流れは下のようになっていたと思います。

垂直管2

この再捕集用の垂直管は地面を大きく掘った部分に設置されています。最初はこの部分は無く、効率よく精錬するために後から継ぎ足したのではないかと感じました。

坑口跡

鉱口

見学できる坑口は2つ横並びとなっており、当然封鎖されています。山中には他にも複数の坑口があるようです。

左側が昭和に仕様されていたもの、右側が古代(奈良時代?)に使用されていたものだそうです。中は暗くて見えませんが、入口はそれなりに広いと感じました。

鉱口内部

山中に複数あるという坑口ですが、左回りルート側の斜面に一つ穴を確認することが出来ます。それが坑口なのか空気穴かは不明ですが(縦穴なのでおそらく空気穴)、これが山中に複数あると考えるとかなり危険だと思いました。

斜面
斜面に開いた穴

穴の中は水が溜まっていましたが、人工的なものに見えました。

縦穴

日本国内には数多くの鉱山があり、観光地になっている場所も複数存在します。しかし、水銀鉱山については産出する水銀の毒性の観点からか、扱う企業が少なく鉱山跡を見ることが出来る施設はほとんど無い状態となっています。

丹生鉱山跡はかなり小さく、解説も控えめとなっていますが、当時の水銀採掘について見ることができる貴重な施設です。私自身かなり勉強になったと感じていますし、この投稿を見て気になったという方は是非訪ねてみてはいかがでしょうか。近くには道の駅ぐらいしか無さそうでしたが、、、


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