【日本2番目の動物園】京都市動物園を見学。動物福祉への取り組みに注目
京都市動物園
京都市立動物園は京都市左京区にある動物園で、1903年に開園しました。100年以上の歴史を持つ日本で2番目に開園した動物園です。
ちなみに1番最初に開園した動物園は上野動物園(1882年)、3番目は天王寺動物園(1915年)です。
動物園に展示されている動物は約120種500点となっています。また。JAZA(日本動物園水族館協会)に所属しており、JAZAが掲げる4つの役割に沿って「いのちにふれる憩いの場」,「種の保存等自然保護への貢献」,生涯学習施設としての「環境教育」,「研究」の4つの役割を施設の目的としています。
また、「いのちかがやく京都市動物園構想2020」を独自に策定し、以下の6つの行動指針を持っています。
- 絶滅のおそれのある動物種の繁殖に取り組み,希少種のいのちをつなぎ,種の保存に寄与します。
- 動物の福祉に配慮し,いのちを輝かせる飼育・展示を行います。
- 野生動物の行動や生態,動物福祉等の研究を推進し,生物多様性の保全に寄与します。
- 種の保存の取組や研究の成果を活かし,幅広い年齢層を対象に環境教育を実践し,楽しい学びの場を提供します。
- 安心で安全な動物園であり続けます。
- 様々な市民・団体との共汗により,人と動物に係る文化を発信します。
ただ動物を展示するのではなく、展示の方法を工夫し、来園者が動物について深く学ぶこと、また展示動物の生活環境をできる限り良くしようという工夫を強く感じることのできる素晴らしい動物園です。来園する際はそういった動物園としての在り方について意識することでより楽しむことが出来るのではないでしょうか。
動物の展示はエリアごとに基本テーマが設けられており、そのテーマに沿った展示がされています。エリアは「もうじゅうワールド」「京都の森」「ゾウの森」「サルワールド」「おとぎの国」「アフリカの草原」の6つあり、それとは別に熱帯動物園や遊園地、カフェ、レクチャールームなどがあります。
基本情報
- 公式ホームページ
- 住所:京都府京都市左京区岡崎法勝寺町 岡崎公園内[GoogleMapで開く]
- 開園時間:9:00~17:00(12~2月は16:30まで)
- 休園日:月曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始(12/28~1/1)
- 入園料:大人620円、中学生以下無料
アクセスはバスの使用が便利です。自家用車の場合、専用の駐車場はありませんが、すぐそばの岡崎公園駐車場が便利です。平日(土曜含む)は上限1400円と土曜であっても上限が設定されています。岡崎公園駐車場は500台近いキャパがあり、午前中であれば何とか駐車できそうです。また、その向かい側のみやこめっせの駐車場も同じく土曜日にも最大料金ありの駐車場となっています。
動物・解説を一通り見た所要時間は2時間ほどでした。動物だけをさっと見るのであれば1時間ほどでしょうか。
もうじゅうワールド
もうじゅうワールドは基本テーマとして「Diversity 多様性」を掲げている展示エリアで、ジャガーやアムールトラなど大型の肉食獣を展示しています。2020年まではライオンが展示されていましたが、2020年にナイルが亡くなって以降、本来群れで暮らすライオンを展示する場所が無いとして展示を取りやめています。
また、天然記念物であるツシマヤマネコを展示している貴重なエリアです。東門付近にはツシマヤマネコ繁殖施設を設けていますが、非公開施設のため見学は出来ません。2021/3/18に横浜のズーラシアでツシマヤマネコの人口繁殖が国内で初めて成功したことが発表されました。今後京都市動物園でも成功するのが楽しみです。
関西でツシマヤマネコを見られるのはここだけですよ。
このエリアでは多様性というテーマに基づき、大型から小型のネコ科動物の展示を行っています。ただ展示するのではなく、オーバーハング型と呼ばれる、下から見上げるタイプのケージとなっていることが最大の特徴です。実際私が見学した日にはジャガーの肉球を見ることが出来ました笑。
環境エンリッチメントにも積極的に取り組んでおり、今後の展示の変化が楽しみです。環境エンリッチメントについては後程解説させていただきます。
京都の森
京都の森は基本テーマとして「Discovery 発見」を掲げている展示エリアで、オオサンショウウオやホンドギツネなど京都に生息している貴重な動物を展示しています。身近な動物を展示することで、ヒトと野生動物との関わりを学ぶことが可能となっており、環境保全についてより具体的に考えることのできる展示が特徴的です。
野鳥舎には、動物園に併設されている野生動物救護センターで保護された鳥が展示されています。救護センターに運び込まれた動物は野生へと帰ることが出来るよう最大限の努力がなされていますが、怪我の具合によっては野生に戻すことが出来ないことも多々あります。ヒトと野生動物との関わりを考える上で決して無視してはいけない部分だと思います。
ヒトと野生動物との関わりにおいてもう一つ忘れてはならない点が野生動物による食害です。畑をイノシシやシカが荒らしてしまうという問題は聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。それを直接的に展示することは難しいですが、間接的に展示されていたので紹介しておきます。
こちらの展示は動物を展示するのではなく、防護柵を展示することで野生動物による食害を考えるように促しています。実物を展示し、その維持コストまで含めて解説することで事の深刻さが分かりやすい展示となっていました。動物がいないためスルーしている人が多いように見受けられたのが惜しい点だと思います。
ゾウの森
ゾウの森は「wonderful/great 驚き」をテーマに掲げている展示エリアで、5頭のゾウとゾウに似ている・近縁の動物が展示されています。
ゾウの展示場は2つに分かれていますが、これはゾウが野生下においてメスは群れ、オスは単独で行動することを再現蘇ているようです。また、体重計が設置されており、運が良ければ乗ってくれるかもしれません。
展示されているゾウは全てアジアゾウのため牙はそれほど発達していません。全体的に優しい印象です。展示場の端の方には牙と歯が展示・解説されていますのでお見逃しなく。
サルワールド
サルワールドは「evolution 進化」をテーマに掲げているエリアで、ゴリラやマンドリルなどの類人猿が多数展示されています。
展示動物の中でも特に人気なのがニシゴリラです。京都市動物園では4頭のニシゴリラが展示されています。「ゴリラのおうち」と呼ばれる建物が作られており、屋内では野生環境に近い生活が出来るように様々な工夫がされた施設となっています。また、多目的室ではゴリラがタッチパネルを使用した教育を受けている様子なども見ることが出来ます。
※新型コロナウイルス蔓延防止のため現在見学に制限が設けられています。
ゴリラのようにヒトにかなり近いものだけではなく、様々なサル類が展示されていますので、進化の樹形図と見比べながら学ぶことが出来ます。
おとぎの国
おとぎの国は「Life いのち」をテーマに掲げているエリアで、動物と触れ合うことが可能となっています。
※現在は新型コロナウイルス蔓延防止のため、ふれあい体験は中止となっています。
残念ながら新型コロナウイルスの影響で、ふれあいコーナーを利用することはできませんでした。本来であればモルモットやウサギ、ヤギ、ヒツジと様々な動物と触れ合うことが出来たようです。
展示そのものが中止になっているわけでは無いため、ロバやペンギンなども含め、近くで見ることは可能です。
建物の屋上には遊歩道が設置されており、木に登る習性のあるレッサーパンダを上から眺めるなど、普段とは異なる視点から動物たちを見学することも可能です。
また、遊歩道沿いには畑が設けられており、野菜が栽培されています。肥料には動物のフンを用い、収穫された野菜もまた動物たちのエサとなる仕組みです。自給自足とは行きませんが、なかなか面白い取り組みではないでしょうか。
アフリカの草原
アフリカの草原は「watch 観察」をテーマに掲げているエリアで、カバやキリンなど大型の哺乳類を中心に展示しています。
展示方法は他の動物園とあまり大差はないように感じられました。ただ、キリンとシマウマが同じ飼育場に離されているのは珍しいのでは無いでしょうか。ガラス張りの部屋などが用意されており、動物を近くで観察できるようになっていましたが、展示グラウンドは広く、それほど近くに感じることもありませんでした。
本エリアについてはもう少し改良の余地ありかなというのが正直な感想です。
熱帯動物館
熱帯動物館は新型コロナウイルス蔓延防止のため、現在は入館することができませんでした。
正面エントランス2階
正面エントランスの2階部分は展示室となっており、京都市動物園で飼育されていた動物のはく製や骨格標本を見ることができます。
はく製は生きている動物以上にじっくりと観察することが可能なため、新たな発見もあるのではないでしょうか。ゴリラははく製になっても迫力がすごいですが、意外と大きさは控えめでした。
キリンや水牛の頭蓋骨などは独特の形状でなかなかに勉強になりました。また、ゴリラとヒトの骨格の違いが分かるように横並びで展示されています。
動物福祉(アニマルウェルフェア)に関して
動物福祉(アニマルウェルフェア)とは、痛みやストレスなどの苦痛を最小限に抑えることで、動物の心理学的幸福を実現するという考えです。この考えは国際的な指針として古くから5つの自由(Five freedoms)が挙げられています。
- 飢えと渇きからの解放
- 不快からの解放
- 痛み、怪我、病気からの解放
- 正常行動発現の自由
- 恐怖・苦悩からの解放
これらは動物園だけでなく、家畜動物や愛玩動物(ペット)に対しても適用されるものですが、「動物の権利」とは考え方が大きく異なるということに留意が必要です。
京都市動物園では「動物福祉に関する指針」を作成し、展示動物の生活環境や飼育員・来園者との関わり方について改善を続けています。
京都市動物園では、「環境デザインの実践」「環境エンリッチメントの実践」「ハズバンダリートレーニングの実践」など様々な取り組みを行っています。その中でも来園者が見て分かりやすいものは、「環境デザインの実践」「環境エンリッチメントの実践」では無いでしょうか。
環境デザイン
環境デザインとは、各種動物が運動能力・認知能力・社会能力などを適切に発揮することが出来るような環境を提供することで、動物種本来の行動パターンを発現できるようにすることです。
京都市動物園ではゴリラの森など、サル類での実践が最も分かりやすいのではないかと思いました。また、いづれの動物種においても他園と比べるとケージが広いことに気づく方もいるのではないでしょうか。単に広くするだけでなく、隠れ場所となる植物の設置など、展示動物が自身の意思で行動を選択できるように配慮されています。
夏場にはゾウたちが真夜中でも活動できるように屋外パドックを解放するなどの取り組みも行っているようです。夜の動物園ツアー行ってみたいです。
環境エンリッチメント
環境エンリッチメントとは、動物たちが心身ともに健康で暮らせるように,動物の生物学的な知見やライフヒストリーをもとにした工夫を行うことです。
動物園にいくとほとんどの動物が常同行動をしているのが現状です。常同行動はストレスが原因とされており、こう言った行動を無くすことが出来れば環境エンリッチメントの成功のひとつとなるのではないでしょうか。
京都市動物園では、エミューの水浴び場を作成したり、レッサーパンダのエサを木の中や落ち葉の下に隠すことで餌探しが出来るようにするなど、様々な工夫を凝らしています。
動画で紹介したアムールトラについてもエンリッチメントに取り組んでおり、一定の成果を挙げているようです。ただ、いずれも一時的なものが多く、まだまだこれからと言った印象を受けました。これに関しては明確な答えなどは無く、世界中で模索されている問題です。
個人的には生体展示を続けていくためにも動物たちにとってより良い環境づくりが進んでいくことを祈るばかりです。
ハズバンダリートレーニング
ハズバンダリートレーニングとは、治療や健康診断のための採血や麻酔など動物にとってストレスになり得る場面に積極的に慣らすことで,人と動物双方の負担を軽減するための訓練を指します。
動物園で飼育されている動物は、動物福祉の観点から、定期健診を欠かすことは出来ません。しかしながら、動物にとって健診の作業は身体的・精神的に相当なストレスになると考えられています。その、ストレスをできる限り軽減しようという観点から積極的に進められる取り組みです。
こちらについては来園者が直接効果を見ることは出来ませんが、動物園ブログ等で紹介されていますので興味のある方はそちらを確認していただければと思います。
遊園地
園内には小さいですが、遊園地が併設されています。観覧車や汽車など小さいながらも魅力的な乗り物が設置されており、子連れで大変賑わっていました。
遊園地内の乗り物は200円で利用可能となっています。
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